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親子関係とは何か、親子関係はだれが決めるのか、という話

しばらく前に、とあるライフプラン相談に関わる機会がありました。
詳細はここには書けませんが、あるご家族が遺族年金をもらえるかどうかを考える機会があったのですが、内容は法律の解釈にまで踏み込むちょっと奥の深い事例でした。
その時に考えたことを、今日の話題にします。
長文になりますが、ご興味ありましたら、どうぞお読みくださいね。

 
そもそも、親子って何でしょう?
親子って、誰が決めるのでしょう?

当たり前すぎる問いですが、様々な家族の在り方がある現在において、明確な定義は何かといわれると、答えに困る問いかけです。
そんな親子関係に関する、ちょっと小難しいお話です。

 
ある結婚した夫婦がいます。
この夫婦は家庭と仕事の両立や不妊治療などもろもろの事情で、受精卵を冷凍保存する医療技術を利用しています。
冷凍保存した受精卵を、子供を授かりたいタイミングで解凍することで、妊娠をサポートしてくれるという、そんな技術が現在はあります。いくつかの医療機関で取り扱っています。

この夫婦はこの医療技術を利用し、しかるべき時期に出産を希望していました。
また、このことは以前より夫婦で話し合ってきており、夫婦の間では合意済みのことでした。

ところが、不幸にも夫は亡くなってしまいます。
その夫の死後3年後、妻は夫婦間で以前より希望していた通り、冷凍保存していた受精卵を利用して妊娠し、出産をします。
夫婦でずっと話し合っていたことを形にするため、そのほか様々な事情や考えもあって、決断に至ったのです。

さてこの時、亡くなった夫は、生まれたの子の父親となれるのでしょうか?
ちょっと考えてみてくださいね。

 
「亡くなった夫は、この子の父親である」という見方は当然にできるでしょう。
受精卵の冷凍保存に至る過程を、夫婦二人で協力して行ってきました。医療機関もそれを知っています。
子のDNA鑑定を行っても親子であると証明できます。生物学的には、子と父親の間には、れっきとした親子関係が存在します。

ところが、このケースは法律上、親子とはみなされません。
過去に同じケースで裁判があり、最高裁判所まで行きました。最高裁判所の判決は「親子ではない」というものでした。

つまり、生物学上の親子関係と、法律上の親子関係とが、一致しないのです。
不思議に思うかもしれませんね。法律上の親子でない理由は、「このような状況において、妻が出産した子と、亡くなった妻の夫との間に、親子と認定する法律がない」からです。

「妻の出産300日前に婚姻していた者を、その妻が出産した子の父親とみなす」という法律があります。この日数を超えて再婚せず出産したケースにおいては、父親を定義する法律がないのです。
これは、法律が、受精卵の冷凍保存や不妊治療を想定していないからです。

また、亡くなった夫が、生まれた子の父親とすべき社会的理由もないとされています。
というのも、亡くなった夫は子に対する扶養義務はありませんし、父が亡くなった後に子が生まれるため、相続による権利も発生しません。亡くなった夫を父親と認定したところで、子にとって何かしらの民法上の権利が生まれるわけでもない、ということも、父親と認められなかった理由とされています。

 
一方で、この真逆の事例があります。
生物学上は親子でないのに、法律上は親子になる、という事例です。ご存知の方も多いですが「養子」という制度です。
以下では、6歳未満の子に適用される特別養子縁組を前提とします。
特別養子縁組を利用することで、生物学上は親子でない二人を、法律上は実子と同等の親子とみなすようになります。

 
さてさて、「親子の定義は何か」という問いは、なかなか奥の深いものです。
受精卵を冷凍したご家族は、亡くなった父親も含めて自分たちは親子だ、と話をするでしょう。
特別養子縁組のご家族は、実の親ではないことを知りながら、自分たちは親子だと、話をするでしょう。
ただし、子が成長し、生物学上の親子と法律上の親子の違いを意識し始め、ほかの家族とうちは違うんだということを知った時、話がややこしくなってきます。

「あんたたちは親子じゃないんだよ」と横からいろいろ言ってくる人たちにも、やがて出会うでしょう。
当事者が親子と思っていても、社会が親子とみなさないというのは、当事者にとってはその存在を否定された気分になるものです。

 
ただ、社会のルールとして、「法律上の親子関係」は避けて通れないものです。
なぜなら、法律上の親子関係を前提として、年金制度などは作られていますし、そのほかの様々な法律も、法律上の親子を前提にしているものが多いからです。
法律上の親子でないと、お金がもらえる/もらえないが決まったりもします。(年金制度がそのよい例ですね)

 
法律で親子関係の規定がある以上、法律を時代に沿った条文にすべきという声はあります。
冷凍受精卵の件で、最高裁判所の判決でも「こういったケースに対応する法律を作ることが望ましい」という一文がありました。しかし、あれから10年以上経っていますが、全く立法化の動きはありません。
多くの人には関心がないことですし、議員がこんなことにこだわっても票を取れないし、憲法違反とされたわけでもないので、動きがないのは当然なのかもしれません。

 
ん~、なんだか長々とした文章になってしまいました。
遺族年金がもらえるかどうかという話から始まり、家族って何だろう、親子ってなんだろう、今の法律はこのままでいいのだろうかと、といろいろ考えたのでした。
これに関して実はまだネタはあるのですが、話が複雑になりすぎるのでいったんここで区切ります。(どうしても聞きたいという方には、今度お会いした時にいっぱい話します。笑)

 
ところで、冷凍受精卵で生まれた子が高校生くらいになり、また特別養子縁組をしたご家族の子も高校生くらいになって、この2つのご家族が出会って、家族とは何かを話すことになったら、どういう話になるのでしょうね。

みなさんがその当事者なら、どんなふうに「家族」を説明しますか?
興味ある方は、ぜひ考えてみてくださいね。では。
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  1. 2016/08/23(火) 20:10:50|
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著者:「FPの知恵・要望を結集した無料のライフプランソフトFinancial Teacher System」開発チーム代表 佐藤潔之

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金融業界でシステム開発に関わっているITコンサルタント・システムエンジニアです。当ライフプランソフト(家計分析シミュレーションソフト)はどなたでも使えるフリーソフトなので、どうぞご利用ください。

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